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アメリカ人のスピード感覚

アメリカ人との国際交渉術 >> 第二投稿:スピード感覚が全く違うアメリカ人

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スピード感覚が全く違うアメリカ人

「日系企業の動きは遅すぎる。相手にするのは無理だ!」と語るアメリカ人のビジネスパーソンが多いのだが、その背景には何があるのだろうか。

「日系企業の動きは遅すぎる。相手にするのは無理だ!」と語るアメリカ人のビジネスパーソンが多いのだが、その背景には何があるのだろうか。

実は、これはただのビジネス文化の違いだけではない。そもそも、日本の大手企業に勤めている人にとっては「根回し」や「稟議書」という言葉が身近であり、企業が大規模な行動を起こす時や重要な案件を締結する時などには、必要な役員は全員調印する必要がある。一方、普通のアメリカ人はこの手続きの存在さえ想像できない。アメリカ企業の一般的なやり方では、案件の大枠について取締役会で許可を得た後、契約の詳細決定権や調印権限が数人の従業員に与えられる。その結果、決定権を与えられた担当責任者は迅速な判断が可能となるのだ。更には、アメリカ企業では一般的に決断力が求められるので、担当責任者になった者は基本的には自分で判断を下す必要があり、上司や周りの者に確認や判断を求めすぎると判断力や決断力が欠如しているという評価を受けてしまう危険性もある。

「アメリカ人との国際交渉術」連続投稿へのイントロダクションはこちら

米国運輸保安局の契約交渉(2012年)

米国運輸保安局と労働組合の契約交渉(2012年)撮影者:AFGE
ライセンス:Creative Commons 2.0 

以上のような基本的な企業構造の違いにより、アメリカ企業と日本企業の「スピード感覚」には大きな乖離が見られる。一つの有名な実例として、フェースブックがインスタグラムを買収した時の経緯を検討してみよう。極端な例ではあるが、フェースブックとインスタグラムのCEO達は3日間で10億ドルの買収を交渉し、合意に至っている。アメリカのビジネス文化や企業内手続きのあり方の下では、時間との戦いと判断された場合、数時間で交渉をまとめ上げて契約を締結することは可能だ。契約時の署名交換も全て電子メールのPDFで行われる。完全にスピード勝負の世界となっている。

この文化の中で育つアメリカのビジネスパーソンは、契約の相手方に「許可を得るには一週間がかかる」等と言われた場合、交渉の戦略として先延ばししているとしか考えられない。

この文化の中で育つアメリカのビジネスパーソンは、契約の相手方に「許可を得るには一週間がかかる」等と言われた場合、交渉の戦略として先延ばししているとしか考えられない。従って、日本企業にとっては一週間かかることが一般的ではあっても、相手が勘違いし失礼な態度として受け取ってしまう危険性がある。予想よりも交渉の進展が遅いと相手の不満を募らせる上に、失礼な交渉戦術だと思われてしまうと、交渉が暗礁に乗り上げる恐れがあるので注意が必要である。

このようなアメリカ人の考え方は、どの場面で交渉の強みになるのか

アメリカ人のスピード感覚の主な強みは二点ある。第一に、交渉や承認のスピードを上げると取引相手の候補者や選択肢を増やすことが出来るため、交渉の立場を有利にすることが可能となる。この点は、前の投稿で述べた役割分担を徹底させるアメリカ文化についても同様だろう。第二に、迅速な対応を武器に、相手側へプレッシャーをかけたり、逆に他の選択肢を与えないという交渉戦略も可能となる。例えば、他の候補者/競争相手に先駆けてオファーや契約条件を出すことで、独占交渉権を求めること等の戦略が考えられる。

では、いかに上記理論を取り込んでいくのか

先ずは、交渉の始めの段階で、社内プロセスの違いについて軽く触れておくことが大事だろう。一般的なアメリカ人にとって常識ではないビジネス文化について交渉の途中や終盤で言及すると、不意打ちを与え、場合によっては重要な情報を隠していたとして不信感を与えることになる恐れがある。但し、関係構築の最初の段階からプロセスにかかる時間を強調しすぎると相手側が引いてしまう危険性もあるので、時期や言い回しには注意したい。

上記のようなアメリカ的スピード感覚がある程度求められる一方で、日本流の強みもある。

上記のようなアメリカ的スピード感覚がある程度求められる一方で、日本流の強みもある。例えば、アメリカ人が上司、取締役、又は株主から受ける時間のプレッシャーは厳しく、早期の契約締結が求められるアメリカ人は、プロセスをスピードアップさせるために様々な交渉点を犠牲にすることがある。日本のプロセスでは、時間のプレッシャーが最優先ではない分、有利な交渉点を吟味することが出来る。また、交渉締結間際で相手側から追加条件を出されても、時間がかかることを理由に却下しうるので、切り札として有効活用してみてはどうだろうか。


アメリカ人との国際交渉術 >> 東京ネクサスの連続投稿へのイントロダクション

アメリカ企業との新規取引が入ったらどう対処すべきだろうか。

アメリカ人が相手側となって、取引、契約の条件等を交渉する場合、特に どこに気をつけるべきなのか。相手が強い態度を取った場合、その理由は何なのだろうか。交渉の進歩に不満があるのか、只の交渉戦略なのか、又はアメリカ人 にとって普通のやり方なのか。そして、どのように文化の違いを乗り越え、望ましい条件を勝ち取れるのだろうか。国際化が続く日本では、この問題点はさらに 重要になっており、国境を越えた交渉を成し遂げるスキルやノウハウは、昨今益々貴重なものとなってきている。

この連続投稿では、日本在住のアメリカ人コンサルタントが上記の質問に答えていく。ニューヨークと東京での実務経験に基づき、アメリカ人の一般的な交渉方法、考え方、ビジネス文化等を、日本の国際交渉初心者に向けて説明し、対応方法も提案する。国際交渉がフォーカスであり、一般的な交渉技術よりは特にアメリカ人との交渉で必要となる知識にスポットを当てている。

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